No Man Is an Island Book Blog

世界文学を中心に読みあさっては感想を書き連ねています。素敵な本たちを中心に紹介していきます!

蠅の王 by William Golding

不気味な話だ。

ディストピア的小説、再びだ。

 

タイトルからして読みたい気が全く起きない。

内容も、少年たちが互いに牙を剥く、なんて怖そうだし。

 

それでも読んじゃった・・・。

 

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ディストピア小説は基本的に好きだ。

ブラックな世界が好きなのである!

なので、この小説ももしかしたら、すごく好きになるかもしれないな、と思いながら読んでみたけど、全然好きにはなれなかった。

ただ、嫌いでもない。

妙に、印象に残る話ではある。

気分が悪くなる話であることは間違いない。

だから、これから読む人には注意していただきたい、そんな内容の話だ。

 

あらすじ

疎開する少年たちを乗せた飛行機が、南太平洋の無人島に不時着した。

生き残った少年たちは、リーダーを選び、助けを待つことに決める。

大人のいない島での暮らしは、当初は気ままで楽しく感じられた。

しかし、なかなか来ない救援やのろしの管理をめぐり、次第に苛立ちが広がっていく。

そして暗闇に潜むという〈獣〉に対する恐怖がつのるなか、ついに彼らは互いに牙をむいた ー 。

 

リーダーになったのは、ラルフ。

勇敢で決断力があって確かにリーダーに向いている少年だ。

そのラルフにつきまとう、というかラルフを頼りにしているのが眼鏡をかけた小太りのピギー。

ピギーとは子豚という意味だが、本名ではなく、あだ名だ。

学校でつけられた不名誉なあだ名をラルフにだけ教えるが、他の子には言うなよ、と念を押す。

しかし、他の子にデブ!と呼ばれたピギーをかばうためか、とっさに、こいつはピギーだよ、と言ってしまったラルフ。

ピギーは笑われ者になり、こんなあだ名をばらしたラルフに憤慨するが、ラルフはデブよりはマシだろう、と言い訳。

まあ、こんなことがあっても、ラルフは基本的にはいいやつで、ピギーも最初から最後まで、ラルフのことを頼っていたし好きでもあった。

 

もう一人、ラルフ同様リーダー格にふさわしい(?)と思われる少年がいた。

それがジャックである。

彼は、自分こそがリーダーにふさわしく、そうなりたいと考えていたため、ラルフが多数決でリーダーに選ばれたことが面白くなかった。

とはいえ、多数決で選ばれている以上どうすることもできず、二番手に甘んじていた。

 

少年たちは結構な人数いるはずなのだが、全部で何人いるのかは小説の最後まで結局わからないまま。

と言うのも、みんなで協力して火をおこし、煙を出すことで救助を求めなければならないというのに、一部のものしか働こうとせず、小さな少年たちは全然集まることもしない。

人数を数える役割を与えられたピギーだったが、結局全員をまとめる力がない彼にはそれは不可能だった。

 

最初こそ、ジャックもラルフと協力して、食料の確保や煙をあげることなんかで一緒に働いていた。

どこから狂ってしまったのか・・・。

 

最大の原因はジャックの一番になりたい、という愚かな自尊心だったのかもしれない。

ジャックを取り巻く少年たちは、最初こそラルフをリーダーに選んだものの、次第にジャック寄りになっていく。

ジャックってのは、ラルフほど賢くもなく理性的でもない。

というよりむしろ感情的で未熟な子供だ。

そんな彼のラルフへの反抗心が、悲劇を生んだと私は感じた。

 

その悲劇がいかなるものかは、実際に読んでみてのお楽しみ。

 

無人島において、純真無垢な少年たちが残酷な獣になっていく様が恐ろしいのだが、こういうことは実際に起きることなのだろうか?

食料が尽きていたわけでもなく、争う理由はどこにもない。

だからこそ、事の発端はジャックの傲慢ゆえだと思ったのだが。

ラルフは優秀な少年ではあるのだが、流石に一人で全員を取りまとめることは難しい。

ジャックのような人間がいればなおさらだ。

 

大人でさえ争いは避けられないのに、少年たちであれば余計にそうなる可能性は高いのではないかな。

無邪気な少年たちがなぜ・・・。

と思う部分もあり、いや、子供だからこそかな、と思う部分もあり。

 

ジャックとその取り巻きたちは、どんどん野蛮化していく。

最終的には戦争的な展開にまでなっていくから驚いてしまう。

 

人間のうちに潜む悪を描いた作品だとも言われているようだ。

しかし、全員がそうだというわけではない。

中には、最後まで救援を求めるべく働き続けた少年もいる。

助かることが大事なのに、自分の地位をあげたいがために躍起になったジャックが浅ましくて愚かしくて読んでいてほとほと嫌な気分にさせられた。

 

ジャックはかわいそうな存在だ。

確かに、彼の図々しさ、あるいは、ずるがしこさはラルフのそれを上回り、一気に仲間を自分のものにしてしまうことはできた。

しかしその仲間たちは彼よりさらに愚かな少年たちだ。

そんな愚かな仲間たちを味方につけ、強くなった気でいるジャックの底の浅さに、いくら少年でも呆れて物が言えなくなるぐらいだった。

と、ジャックへのボロカス度がすごいが、それはきっと読んだ人の大半が感じることだと思う。

 

最終的に、少年たちはどうなるのか、これも読んでみてのお楽しみとしていただきたい。

 

ウィリアム・ゴールディングノーベル賞作家であるというが、この作品も非常に評価の高い名作であるという。

私にはちょっと合わなかったが、仰天する内容であることには変わりないので、刺激的な小説が読みたい人にはオススメしたい一作である。

 

最後に、その風変わりなタイトルについて訳者あとがきに言及があった。

・・・タイトルである〈蠅の王〉だが、これは新約聖書に出てくる悪霊のかしらベルゼブル(『マタイによる福音書』十二章二十四節など)を指す。

ベルゼブルヘブライ語で〈蠅の王〉を意味するのだ。

ベルゼブル七つの大罪のうち“大食”を司ることも念頭においておくといいだろう。

エスが人に取り憑いた悪霊を追いだすと、悪霊は豚のなかに入ったという逸話も(『ルカによる福音書』八章三十三節)。

そして少年たちを脅かす〈獣〉(the Beast)は、『ヨハネの黙示録』十三章十八節に記された〈獣〉=アンチキリストを当然連想させる。(362)

 

人間の性悪説を作者は信じていたのだろうか。

だとしたら、私には到底理解できない思想が本作品の奥底には秘められているのかもしれない。

 

蠅の王〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

蠅の王〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)