No Man Is an Island Book Blog

世界文学を中心に読みあさっては感想を書き連ねています。素敵な本たちを中心に紹介していきます!

The Browning Version by Terence Rattigan

とある授業にて読んだ本である。
戯曲であるのだが、映画化もされており、時折映画を観ながら読み進めていった。

夫婦仲の冷えきったパブリックスクールの教師Andrew(主人公)とその妻Millie、また妻の不倫相手の若い教師、生徒、校長などが主な登場人物たち。
主人公はギリシア神話の『アガメムノン』を若い頃に英訳するなど、偉大な教師であるものの、教え方は単調で退屈、生徒からも学校からもあまり愛されていない可哀想な人物。
いわゆるお堅い、つまらない人間だと思われているのだ。
妻からも愛想をつかされ、若い教師と不倫までされている。
その主人公の悲哀をテーマにしている。

誠に残念なことに、彼は自分の知識や、芸術に対する情熱を他者と共有することができなかったのである。
やがて病気になり、パブリックスクールも辞めるが、十分なお金ももらえない。
卒業式では、彼のほうが長く学校に居たのに、もっと若く、かつ学校に居た年数も短い人気者の先生の別れの挨拶を最後に持ってきたいから、君は先に挨拶をしてくれ、と校長に頼まれ、それを飲み込むしかない。
そんな情けない夫の姿に耐えかねて妻からも小言を言われる。
とことんまで哀れになってくるのだが、妻の不倫相手があるきっかけで、彼女の夫に対する冷酷さを知り、愛が冷めて彼女と別れる。
Millieと不倫こそしていたものの、Andrewの人間的魅力についに気づいた若教師はAndrewに謝罪の気持ちを告白する。

内容も面白いのだが、やはり戯曲の面白さとは、登場人物の心の微妙な動き、変化の描写が優れている点であると思う。
Andrewはきっと寂しい人生を過ごしてきたのだろう、と同情せずにはいられないが、最後は彼も一度は承諾した卒業式での挨拶を、やはり自分を最後にしてくれ、と校長に頼む。
これは大きな心境の変化であろう。
今までは、自分がぞんざいに扱われることがあっても、おとなしく受け入れていただけの人生にようやっと終止符を打ったようにも見える。

The Browning Versionとは。
作品中に出てくる『アガメムノン』というギリシア神話
これをロバート・ブラウニングが英訳したものが、作中で使われているということ。
Andrew自身もその作品を翻訳している。
そして、『アガメムノン』のストーリーを実際に体現しているのがAndrewの人生。
神話では、アガメムノンは妻とその情夫により暗殺されるという。
暗殺こそされないが、妻が不倫をして自分を裏切り、冷酷な態度を取り続けるという点で、似通っているということ。
そういった意味でのこのタイトルらしい。

いつか劇で観てみたいけど、どこかでやってるのだろうか。